JIS Q 17025:2018(ISO/IEC 17025:2017)
試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項
序文
この規格は,2017 年に第3 版として発行されたISO/IEC 17025 を基に,技術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格である。
この規格は,ラボラトリの運営の信頼性を高めるという目的をもって作成された。 この規格は,ラボラトリが適格な運営を行い,かつ,妥当な結果を出す能力があることを実証できるようにするための要求事項を含んでいる。 この規格に適合するラボラトリは,一般にJIS Q 9001 の原則にも従った運営をすることになる。 この規格は,リスク及び機会に取り組むための処置を計画し,実施することをラボラトリに要求している。リスク及び機会の双方に取り組むことによって,マネジメントシステムの有効性の向上,改善された結果の達成及び好ましくない影響の防止のための基礎が確立される。ラボラトリは,どのリスク及び機会に取り組む必要があるかを決定する責任をもつ。 この規格の使用は,ラボラトリとその他の機関との間の協力を容易にし,情報及び経験の交換並びに規格及び手順の整合化を支援するであろう。ラボラトリがこの規格に適合している場合には,国家間での結果の受入れが容易になる。 |
1 適用範囲
この規格は,ラボラトリの能力,公平性及び一貫した運営に関する一般要求事項を規定する。
この規格は,要員の数に関係なく,ラボラトリ活動を行う全ての組織に適用できる。 ラボラトリの顧客,規制当局,相互評価を使用する組織及びスキーム並びに認定機関及びその他の組織が,ラボラトリの能力を確認又は承認するに当たってこの規格を使用する。 注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 ISO/IEC 17025:2017,General requirements for the competence of testing and calibration laboratories (IDT) なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,“一致している”ことを示す。 |
2 引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Q 17000 適合性評価-用語及び一般原則 注記 対応国際規格:ISO/IEC 17000,Conformity assessment-Vocabulary and general principles(IDT)ISO/IEC Guide 99,International vocabulary of metrology-Basic and general concepts and associated terms(VIM) 1) 注1) JCGM 200 としても知られている。 |
3 用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,ISO/IEC Guide 99 及びJIS Q 17000 によるほか,次による。
3.1 公平性(impartiality) 客観性があること。 注記1 客観性とは,利害抵触がないか,又はラボラトリの事後の活動に悪影響を及ぼすことがないよう,利害抵触が解決されていることを意味する。 注記2 公平性の要素を伝えるのに有用なその他の用語には,利害抵触がないこと,偏見がないこと,先入観がないこと,中立,公正,心が広いこと,公明正大,利害との分離,及び均衡が含まれる。 (出典:JIS Q 17021-1:2015,3.2 の注記1 にある“認証機関”を“ラボラトリ”に置き換え及び“独立性”を注記2 から削除した。) 3.2 苦情(complaint) ラボラトリの活動又は結果に関し,人又は組織が回答を期待して行う当該ラボラトリへの不満の表明。 (出典:JIS Q 17000:2005 の6.5 を修正。“適合性評価機関又は認定機関”を“ラボラトリ”に置き換えた。また,“結果”を追加し,“異議申立て”を削除した。) 3.3 試験所間比較(interlaboratory comparison) 事前に定めた条件に従って,二つ以上のラボラトリが,同一品目又は類似品目で行う,測定又は試験の企画,実施及び評価。 (出典:JIS Q 17043:2011 の3.4) 3.4 試験所内比較(intralaboratory comparison) 事前に定めた条件に従って,同一のラボラトリ内で,同一品目又は類似品目で行う,測定又は試験の企画,実施及び評価。 3.5 技能試験(proficiency testing) 試験所間比較による,事前に決めた基準に照らしての参加者のパフォーマンスの評価。 (出典:JIS Q 17043:2011 の3.7 を修正。注記を削除した。) 3.6 ラボラトリ(laboratory) 次の一つ以上の活動を実行する機関。 - 試験 - 校正 - 後の試験又は校正に付随するサンプリング 注記 現在の規格の枠組みにおいて,“ラボラトリ活動”という用語は,上記三つの活動のことをいう。 3.7 判定ルール(decision rule) 特定の要求事項への適合性を表明する際に,測定不確かさをどのように考慮するかを記述した取決め。 3.8 検証(verification) 与えられたアイテムが規定された要求事項を満たしているという客観的証拠の提示。 例1 対象とする任意の標準物質が,当該の量の値及び測定手順に対して,質量10 mg の測定試料まで均質であることの確認。 例2 測定システムが性能特性又は法的要求事項を満たしていることの確認。 例3 目標測定不確かさを満たすことができることの確認。 注記1 適用可能な場合は,測定不確かさを考慮することが望ましい。 注記2 アイテムとは,例えば,プロセス,測定手順,材料,化合物又は測定システムのいずれであってもよい。 注記3 規定された要求事項とは,例えば,製造業者の仕様を満たしていることである。 注記4 VIML 及び一般に適合性評価で定義しているように,法定計量でいう検証は,評価及び表示,及び/又は測定システムに対する検定証明書の発行を含む。 注記5 検証と校正とを混同しないようにすることが望ましい。全ての検証が妥当性確認であるとは限らない。 注記6 化学の分野では,関連する実在物又は活性の同一性の検証には,その実在物若しくは活性の構造又は性質の記述が必要となる。 (出典:ISO/IEC Guide 99 の2.44) 3.9 妥当性確認(validation) 規定された要求事項が意図した用途に十分であることの検証。 例 水中の窒素の質量濃度の測定に通常用いる測定手順は,ヒトの血清中の窒素の質量濃度の測定に対しても妥当である場合がある。 (出典:ISO/IEC Guide 99 の2.45) |
4 一般要求事項
5 組織構成に関する要求事項
5.1 ラボラトリは,そのラボラトリ活動に法的責任をもつ法人であるか,又は法人の一部として明確に位置付けられていなければならない。 注記 この規格の目的において,政府のラボラトリは,政府機関としての地位に基づき法人とみなす。 5.2 ラボラトリは,そのラボラトリについて総合的な責任をもつラボラトリマネジメントを特定しなければならない。 5.3 ラボラトリは,この規格に適合するラボラトリ活動の範囲を明確化し,文書化しなければならない。 ラボラトリは,継続的に外部から提供されるラボラトリ活動を除いた当該ラボラトリ活動の範囲に関してだけ,この規格への適合を主張しなければならない。 5.4 ラボラトリ活動は,この規格,ラボラトリの顧客,規制当局及び認可を与える機関の要求事項を満足するように実施されなければならない。このことには,その全ての恒久的施設で実施されるラボラトリ活動,その恒久的施設から離れた場所で実施されるラボラトリ活動,関連する一時施設若しくは移動施設で実施されるラボラトリ活動,又は顧客の施設で実施されるラボラトリ活動が含まれなければならない。 5.5 ラボラトリは,次の事項を行わなければならない。
5.7 ラボラトリマネジメントは,次の事項を確実にしなければならない。
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6 資源に関する要求事項
7 プロセスに関する要求事項
8 マネジメントシステムに関する要求事項
8.1 選択肢8.1.1 一般 ラボラトリは,この規格の要求事項の一貫した達成を支援し,実証するとともに,試験・校正結果の品質を保証することを可能にするマネジメントシステムを構築し,文書化し,実施し,維持しなければならない。この規格の箇条4~箇条7 の要求事項に適合することに加え,ラボラトリは,選択肢A 又は選択肢 B に基づくマネジメントシステムを実施しなければならない。 注記 詳しくは,附属書B を参照。 8.1.2 選択肢A ラボラトリのマネジメントシステムは,少なくとも次の事項に取り組まなければならない。 - マネジメントシステムの文書化(8.2 参照) - マネジメントシステム文書の管理(8.3 参照) - 記録の管理(8.4 参照) - リスク及び機会への取組み(8.5 参照) - 改善(8.6 参照) - 是正処置(8.7 参照) - 内部監査(8.8 参照) - マネジメントレビュー(8.9 参照) 8.1.3 選択肢B JIS Q 9001 の要求事項に従ってマネジメントシステムを確立し,維持しており,この規格の箇条4~箇条7 の要求事項を一貫して満たすことを裏付け,実証することが可能なラボラトリは,少なくとも8.2~8.9に規定する。マネジメントシステム要求事項の意図をも満たしている。 8.2 マネジメントシステムの文書化(選択肢A)8.2.1 ラボラトリマネジメントは,この規格の目的を果たすための方針及び目標を,確立し,文書化し,維持し,ラボラトリの組織の全ての階層で,この方針及び目標が周知され,実施されることを確実にしなければならない。 8.2.2 この方針及び目標は,ラボラトリの能力,公平性及び一貫性のある運営を取り上げていなければならない。 8.2.3 ラボラトリマネジメントは,マネジメントシステムの開発及び実施,並びにマネジメントシステムの有効性の継続的改善に対するコミットメントの証拠を提示しなければならない。 8.2.4 この規格の要求事項を満たすことに関係する全ての文書,プロセス,システム,記録をマネジメントシステムに含めるか,マネジメントシステムから引用するか,又はマネジメントシステムに関連付けなければならない。 8.2.5 ラボラトリ活動に関与する全ての要員は,それらの要員の職責に適用されるマネジメントシステム文書及び関連情報の該当部分を利用できなければならない。 8.3 マネジメントシステム文書の管理(選択肢A)8.3.1 ラボラトリは,この規格を満たすことに関係する(内部及び外部の)文書を管理しなければならない。 注記 ここでいう“文書”とは,方針表明文,手順書,仕様書,製造業者の指示書,校正値表,チャート,教科書,ポスター,通知,覚書,図面,図解などであり得る。それらは,ハードコピーか,又はデジタル形式のような様々な媒体で作成できる。 8.3.2 ラボラトリは,次の事項を確実にしなければならない。
8.4 記録の管理(選択肢A)8.4.1 ラボラトリは,この規格の要求事項を満たすことを実証するための読みやすい記録を確立し,保持しなければならない。 8.4.2 ラボラトリは,記録の識別,保管,保護,バックアップ,アーカイブ,検索,保持期間及び廃棄のために必要な管理を実施しなければならない。ラボラトリは,契約上の義務に準じた期間にわたって記録を保持しなければならない。これらの記録へのアクセスは,機密保持のコミットメントに準じなければならない。また,記録は直ちに利用できなければならない。 注記 技術的記録に関する追加的な要求事項は,7.5 に記載されている。 8.5 リスク及び機会への取組み(選択肢A)8.5.1 ラボラトリは,次の事項を目的として,ラボラトリ活動に付随するリスク及び機会を考慮しなければならない。
8.5.2 ラボラトリは,次の事項を計画しなければならない。
- これらの取組みのマネジメントシステムへの統合及び実施。 - これらの取組みの有効性の評価。 注記 この規格は,ラボラトリのリスクへの取組みの計画について規定する。が,リスクマネジメントの正式な方法又は文書化されたリスクマネジメントプロセスの要求事項は規定していない。ラボラトリは,例えば,他の手引又は規格の適用を通じて,この規格によって要求されるリスクマネジメント手法よりも広範な手法を開発するか否かを決定できる。 8.5.3 リスク及び機会への取組みは,ラボラトリが出す結果の妥当性に与える潜在的影響に釣り合ったものでなければならない。 注記1 リスクへの取組みの選択肢には,脅威の特定及び回避,機会を追求するためのリスク負担,リスク源の除去,可能性若しくは結果の変更,リスクの共有,又は情報に基づく決定によるリスク保持が含まれ得る。 注記2 機会は,ラボラトリ活動の範囲拡大,新たな顧客への取組み,新技術の使用及び顧客のニーズに取り組むその他の可能性につながり得る。 8.6 改善(選択肢A)8.6.1 ラボラトリは,改善の機会を特定し,選択して,必要な処置を実施しなければならない。 注記 改善の機会は,業務手順のレビュー,方針の使用,全体の目標,監査結果,是正処置,マネジメントレビュー,要員からの提案,リスクアセスメント,データの分析,技能試験の結果を通じて特定することができる。 8.6.2 ラボラトリは,顧客からの肯定的なフィードバック及び否定的なフィードバックの両方を求めなければならない。マネジメントシステム,ラボラトリ活動及び顧客へのサービスの改善のためにフィードバックを分析し,利用しなければならない。 注記 フィードバックの種類の例には,顧客満足の調査,コミュニケーションの記録及び顧客と共同での報告書のレビューが含まれる。 8.7 是正処置(選択肢A)8.7.1 不適合が発生した場合,ラボラトリは,次の事項を行わなければならない。。
- その不適合を管理し,修正するための処置をとる。 - その不適合の結果に対処する。
- 不適合をレビューし,分析する。 - その不適合の原因を明確にする。 - 類似の不適合の有無,又はそれらが発生する可能性を明確にする。
8.7.2 是正処置は,検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない。 8.7.3 ラボラトリは,次の事項の証拠として記録を保持しなければならない。
8.8 内部監査(選択肢A)8.8.1 ラボラトリは,マネジメントシステムが次の状況にあるか否かに関する情報を提供するために,あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施しなければならない。
- ラボラトリ活動を含めた,ラボラトリ自体のマネジメントシステムに関する要求事項 - この規格の要求事項
8.8.2 ラボラトリは,次の事項を行わなければならない。。
注記 JIS Q 19011 は,内部監査に関する指針を示している。 8.9 マネジメントレビュー(選択肢A)8.9.1 ラボラトリマネジメントは,マネジメントシステムが引き続き,適切,妥当かつ有効であることを確実にするために,この規格を満たすことに関係する明示された方針及び目標を含め,あらかじめ定めた 間隔でマネジメントシステムをレビューしなければならない。 8.9.2 マネジメントレビューへのインプットは,記録しなければならない。また,マネジメントレビューへのインプットには,次の事項に関係する情報を含めなければならない。
8.9.3 マネジメントレビューからのアウトプットは,少なくとも次の事項に関係する全ての決定及び処置を記録しなければならない。
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