ISO/IEC 17025は、試験所および校正機関の能力に関する国際規格で、信頼性の高い試験や校正結果を提供するための要求事項を定めています。この規格の運用において「記録の重要性」は非常に高く、以下のような具体的な理由があります。

【ISO17025における運用記録の重要性】

1. トレーサビリティの確保

  • 測定結果の根拠や経緯を明確にするために必要。

  • 例えば、試験データ、使用した機器、校正状態、操作員などの情報を記録しておくことで、「なぜその結果になったのか」を遡ることが可能。

2. 品質保証と信頼性の担保

  • 顧客や監査機関に対して、試験・校正結果の正確性と信頼性を示す証拠になる。

  • 「ちゃんとやってる」ではなく、「記録により証明できる」ことが重要。

3. 問題発生時の原因追及(不適合対応)

  • 万が一、誤った結果やトラブルが発生した場合に、原因を追跡・分析するために不可欠。

  • 例えば「どの機器を使ったのか」「校正は有効だったか」「誰が操作したのか」などを記録で確認できる。

4. 継続的改善への活用

  • 記録をもとに傾向分析や改善点の抽出が可能。

  • 例:ある操作員だけエラー率が高い → 教育訓練の見直しにつながる。

5. 監査・認定機関への対応

  • 外部監査(例えば認定機関による審査)で、「規格を満たしているか」を判断する際の重要資料。

  • 記録が不備だと、「実施していない」と見なされる可能性も。

6. 法的リスクの回避

  • 測定結果が裁判や製品事故の証拠になるケースでは、記録が法的な根拠になる。

  • 正確で時系列が明確な記録が、自身や組織を守ることにもつながる。

【記録の具体例】

  • 試験・校正の作業記録

  • 使用機器の校正記録・点検履歴

  • 作業手順に関する変更記録

  • 不適合の処置記録

  • 教育訓練記録

  • サンプルの受入・管理記録

必要なのは「完璧な作業」ではなく、「きちんと証明できる作業」。
ISO17025では、その“証明”を担うのが記録です。