ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム 導入・運用の手引き
Quality Management System
ISO 9001
品質マネジメントシステム
導入・運用の手引き 〜 建設業・製造業向け 〜
文書番号
QMS-001
版 数
第 1 版
制定日
2025年4月1日
管理部門
品質管理部
01
ISO 9001とは

ISO 9001は、国際標準化機構(ISO)が定める品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格です。現行規格は2015年版(ISO 9001:2015)であり、組織が顧客要求事項および適用される法令・規制要求事項を一貫して満たす製品・サービスを提供する能力があることを実証するための枠組みを提供します。

建設業・製造業において、ISO 9001の認証取得は品質向上、顧客信頼の獲得、業務効率の改善、そして競争力強化につながります。

ISO 9001:2015の主な特徴
リスクに基づく考え方(Risk-based Thinking)の導入
Plan-Do-Check-Act(PDCAサイクル)の継続的な適用
トップマネジメントのリーダーシップ強化
組織の状況把握と利害関係者ニーズの反映
プロセスアプローチによる効果的な業務管理
知識の管理(組織の知識の保持・維持)
02
建設業・製造業での主な適用ポイント
建設業における適用

建設業では、工事ごとにプロジェクトが異なるため、以下の点を重点的に管理します。

管理項目 主な内容 適用条項
工事品質計画 各工事案件の品質計画書を作成し、施工前に品質目標・検査基準を明確化 6.2 / 8.1
協力業者管理 外部委託業者・資材サプライヤーの評価・選定・監視を実施 8.4
施工管理 施工プロセスの監視・測定、工程内検査の実施と記録 8.5 / 9.1
検査・試験 材料受入検査、工程内検査、竣工検査の実施と記録の保持 8.6
不適合管理 手直し・やり直し工事の原因分析と再発防止策の実施 8.7 / 10.2
顧客コミュニケーション 施主・発注者との定期的な打合せ、要求事項の確認と変更管理 8.2
製造業における適用

製造業では、製品の標準化・量産化に対応した品質管理体制が重要です。

管理項目 主な内容 適用条項
設計・開発管理 製品設計のレビュー・検証・妥当性確認、設計変更の管理 8.3
製造工程管理 作業標準書の整備、工程パラメータの監視・測定 8.5
受入検査 原材料・部品の受入検査、合格基準の明確化と記録 8.4 / 8.6
トレーサビリティ 製品識別・ロット管理、追跡可能性の確保 8.5.2
測定機器管理 検査・測定機器の校正計画と記録の維持 7.1.5
顧客財産管理 支給品・貸与品の識別・保護・取扱い管理 8.5.3
03
品質マネジメントシステム構築ステップ

ISO 9001認証取得に向けた一般的なステップは以下のとおりです。

1
現状分析・ギャップ分析
現行の品質管理体制とISO 9001要求事項とのギャップを把握する。組織の状況、利害関係者のニーズ、適用範囲を決定する。
期間目安:1〜2ヶ月
2
体制整備・教育
品質マニュアルの作成、役割・責任・権限の明確化。全社員へのISO認識教育を実施する。
期間目安:1〜2ヶ月
3
文書・手順整備
品質マニュアル、手順書、作業標準書、様式類を整備する。リスク・機会の評価を実施する。
期間目安:2〜3ヶ月
4
運用・記録蓄積
QMSを実際に運用し、必要な記録(文書化した情報)を蓄積する。
期間目安:3〜6ヶ月
5
内部監査・マネジメントレビュー
内部監査員による内部監査を実施し、是正措置を取る。トップマネジメントによるマネジメントレビューを実施する。
期間目安:1〜2ヶ月
6
審査申請・認証審査
認証機関を選定し、第一段階審査(文書審査)・第二段階審査(現地審査)を受審する。
期間目安:2〜3ヶ月
04
主な文書化した情報(必須文書・記録)

ISO 9001:2015では、維持すべき文書(手順書等)と保持すべき記録が規定されています。

維持すべき文書化した情報(手順書・規定類)
文書名概要対応条項
品質マニュアルQMSの適用範囲、プロセスの相互関係、基本方針を記述(必須ではないが強く推奨)全体
品質方針トップマネジメントが表明する品質に関する意図・方向性5.2
品質目標管理規定品質目標の設定・展開・管理・評価の手順6.2
リスク管理規定リスク・機会の特定、評価、対応策の手順6.1
教育訓練規定力量の決定・教育訓練計画・有効性評価の手順7.2
文書・記録管理規定文書の作成・承認・改訂・配付・廃棄、記録の識別・保存の手順7.5
外部提供者管理規定外部委託先・購買先の評価・選定・監視の手順8.4
不適合管理・是正措置規定不適合品の処置、根本原因分析、是正措置の手順8.7 / 10.2
内部監査規定内部監査の計画・実施・報告・フォローアップの手順9.2
保持すべき記録(エビデンス)
記録名内容対応条項
適用範囲決定の根拠記録QMSの適用範囲と除外項目の根拠4.3
品質目標管理記録目標値・実績・達成状況の記録6.2
教育訓練記録受講者・内容・実施日・有効性評価の記録7.2
機器校正記録測定機器の校正実施記録と合否判定7.1.5
製品・サービスの監視測定記録検査成績書、試験報告書、工程管理記録8.6 / 9.1
外部提供者評価記録業者評価結果、承認業者リスト8.4
不適合・是正措置記録不適合報告書、原因分析、是正処置記録8.7 / 10.2
内部監査報告書監査計画、チェックリスト、指摘事項と是正記録9.2
マネジメントレビュー議事録レビューのインプット・アウトプット、決定事項9.3
05
認証取得・維持のための重要ポイント
トップマネジメントのコミットメント

ISO 9001:2015では、トップマネジメント(経営者)のリーダーシップが明確に求められます。品質方針の策定・周知、資源の確保、定期的なマネジメントレビューの実施が必要です。

重要:QMSは「品質管理部門だけの仕事」ではなく、経営と一体となって推進することが成功の鍵です。
全員参加の意識醸成

ISO 9001は全社員が対象です。自分の業務がどのプロセスに関連し、品質にどう影響するかを全員が理解することが重要です。定期的な教育・訓練とコミュニケーションを通じて、品質意識を組織全体に浸透させましょう。

継続的改善の文化醸成

認証取得はゴールではなく、品質改善活動のスタートです。不適合や顧客クレームを「責任追及」ではなく「改善のヒント」として活用し、PDCAサイクルを継続的に回すことが求められます。

記録の適切な管理

「言った、やった」では不十分です。ISO 9001では「記録(文書化した情報)」によるエビデンスが必須です。記録は見読性・完全性を確保し、適切な期間保存することが求められます。電子データの場合はバックアップ管理も重要です。

06
認証後のサーベイランス・更新審査

ISO 9001認証の有効期間は3年間です。認証後も以下のスケジュールで審査が継続されます。

認証取得後 約12ヶ月
第1回 サーベイランス審査
QMSの継続的な適合性・有効性の確認(一部プロセスを抽出)
認証取得後 約24ヶ月
第2回 サーベイランス審査
QMSの継続的な適合性・有効性の確認(一部プロセスを抽出)
認証取得後 約36ヶ月
更新審査(再認証審査)
QMS全体を対象とした包括的な審査。合格で認証が3年間更新される。
日常的に維持すべき活動
内部監査の定期実施(年1回以上)
マネジメントレビューの定期実施(年1回以上)
品質目標の進捗管理と見直し
是正措置の適切な実施と有効性確認
文書・記録の最新化と保管管理
07
よくある質問(FAQ)
Q
認証取得までどのくらいかかりますか?
準備状況にもよりますが、一般的に6〜18ヶ月程度が目安です。ギャップが少ない組織では6〜9ヶ月での取得事例もあります。
Q
認証取得にかかるコストは?
認証機関への審査費用(規模により異なる)、コンサルタント費用(任意)、内部の工数コストが主な費用です。認証機関に事前見積を取ることをお勧めします。
Q
小規模な会社でも取得できますか?
はい、規模に関係なく取得できます。ISO 9001は組織の規模・業種を問わず適用可能な規格です。文書量や体制は組織の実態に合わせてシンプルに構築することが推奨されます。
Q
外部コンサルタントは必要ですか?
必須ではありませんが、初回取得時は専門コンサルタントの支援を受けることで、効率よく確実に進められます。社内にISO経験者がいる場合は自社構築も十分可能です。
Q
認証機関はどこを選べばよいですか?
JABなど認定機関に認定された認証機関(JQA、BSI、DNV、SGS、Bureau Veritas等)の中から、業界実績・費用・スケジュール等を比較して選定することをお勧めします。
08
お問い合わせ
本資料に関するご質問・ご相談は、品質管理部までお問い合わせください。
内部監査、QMS文書の整備、是正措置など、各種サポートを行っております。