ISO/IEC 17025とは

ISO/IEC 17025とは

「試験所および校正機関の能力に関する一般要求事項」を定めた国際規格です。

簡単に言うと、試験や校正を行うラボ(検査機関や研究施設など)が、技術的にも管理的にも信頼できるかどうかを判断するための基準です。

試験所、校正機関に求められるもの

 1.測定や試験の結果が正確で再現性があること。

 2.試験・校正機器、スタッフの技術、手順、データ処理などが適切か。

 3.品質マニュアルや記録の管理、内部監査、継続的な改善など、ISO9001に近い部分も。

対象となる機関の例

 ・測定機器を校正する校正機関

 ・製品の安全性や性能を試験する試験所

 ・環境測定(空気、水質、騒音など)を行うラボ

 ・食品・医薬品検査機関

 ISO 17025取得のメリット

 ①顧客や行政機関からの信頼性向上

 ➁国際的な相互認証(ILAC MRAなど)で海外でも通用

 ➂品質管理の強化と内部プロセスの効率化

 ④裁判やクレーム対応時にも証拠力の高いデータとされる

ISO/IEC 17025:2017 要求事項

ISO 17025:2017の要求事項解説

ISO 17025:2017は試験所および校正機関の能力に関する一般要求事項を定めた国際規格です。

4. 一般要求事項

4.1 公平性

  • 試験・校正活動の公平性を確保する仕組みが必要
  • 公平性へのリスクを継続的に特定・対応すること
  • 商業的・財政的・その他の圧力に影響されない体制の確立

4.2 機密保持

  • 顧客情報の機密保持に関する方針と取決めの文書化
  • 法的に要求される場合の情報開示プロセスの確立
  • 顧客情報保護のための具体的な措置の実施

5. 組織構成に関する要求事項

5.1〜5.2 法的地位と責任

  • 法的な責任が特定できる組織であること
  • 規格要求事項を満たす活動を実施する責任者の特定

5.3〜5.4 活動範囲

  • 規格要求事項を満たす活動範囲の明確化
  • 継続的に要求事項を満たしていることの実証

5.5〜5.7 組織構造と管理

  • 組織構造、責任、権限、相互関係の明確化
  • 技術的運営と品質管理を確実にする体制の確立
  • マネジメントシステムの実施・維持・改善の担当者の明確化

6. 資源に関する要求事項

6.1 一般

  • 試験・校正活動に必要な人員、設備、システム等の確保

6.2 要員

  • 力量要件の明確化と評価方法の確立
  • 公平性に影響を与える圧力からの保護
  • 適切な資格、教育、訓練、経験の記録

6.3 施設及び環境条件

  • 試験・校正結果に影響を与える要因の管理
  • 環境条件の監視・記録・管理
  • 相互に両立しない活動の分離

6.4 設備

  • 試験・校正に必要な設備へのアクセス確保
  • 設備の取扱い、保守、使用の手順文書化
  • 使用前検証と定期的な校正の実施
  • 測定不確かさへの寄与の確認

6.5 計量トレーサビリティ

  • 測定結果のSI単位へのトレーサビリティ確保
  • 校正プログラムの確立と実施
  • 参照標準・標準物質の管理

6.6 外部から提供される製品及びサービス

  • 外部提供者の評価・選定・モニタリング
  • 購入品・サービスの検証手順の確立
  • 外部提供者とのコミュニケーション7. プロセスに関する要求事項

7 プロセスの要求事項

7.1 依頼、見積り及び契約のレビュー 

  • 顧客要求事項の明確化と文書化
  • 試験所の能力と資源の確認
  • 契約変更時の管理手順

7.2 方法の選定、検証及び妥当性確認

  • 適切な試験・校正方法の選定・検証
  • 標準外方法の妥当性確認手順
  • 方法の開発・改良プロセスの管理

7.3 サンプリング

  • サンプリング計画と方法の文書化
  • サンプリングデータの記録
  • サンプリングの不確かさの評価

7.4 試験・校正品目の取扱い

  • 試験・校正品目の識別・保管・準備
  • 品目の状態を記録する手順
  • 異常や逸脱の記録と顧客への連絡

7.5 技術的記録

  • 試験・校正結果に影響する条件の記録
  • 観測、データ、計算の記録と追跡性
  • 記録の修正に関する管理

7.6 測定の不確かさの評価

  • 測定の不確かさの要因特定
  • 各試験・校正方法の不確かさ評価
  • 関連する不確かさ成分の考慮

7.7 結果の妥当性の確保

  • 品質管理手順の策定・実施
  • 技能試験への参加
  • 結果の妥当性監視と傾向分析

7.8 結果の報告

  • 試験・校正報告書の内容要件
  • 責任者による承認と宣言
  • 結果解釈・意見・解釈の明確な識別

7.9 苦情

  • 苦情処理プロセスの文書化
  • 苦情対応の責任者の明確化
  • 処理結果の記録と顧客への通知

7.10 不適合業務

  • 不適合業務の識別と対応手順
  • 是正処置の必要性評価
  • 必要に応じた顧客への通知

7.11 データの管理と情報マネジメント

  • 情報システムのバリデーション
  • データの保護と機密確保
  • システム障害時の対応計画

8. マネジメントシステムに関する要求事項

8.1 選択肢(A/B)

  • オプションA:この規格の要求事項に従うMS
  • オプションB:ISO 9001に従うMS

8.2 マネジメントシステム文書

  • 方針・目標・手順の文書化
  • 文書の構造と管理

8.3〜8.4 文書管理・記録管理

  • 文書の作成・承認・改訂の管理
  • 記録の識別・保管・保護・検索

8.5 リスク及び機会への取組み

  • リスクと機会の特定・評価
  • 対応計画の策定と有効性評価

8.6〜8.7 改善・是正処置

  • 改善機会の特定と実施
  • 不適合の原因分析と再発防止

8.8 内部監査

  • 計画的な内部監査の実施
  • 監査結果の記録と対応

8.9 マネジメントレビュー

  • マネジメントシステムの適切性・有効性のレビュー
  • インプット・アウトプット要件の明確化
  • 改善の機会と変更の必要性の特定