ISO 14001の内部監査は、環境マネジメントシステム(EMS)が適切に運用されているかを確認し、継続的な改善を促すための重要なプロセスです。
以下に、内部監査の目的、手順、監査項目、監査報告、是正処置の流れについて詳しく説明します。
1. 内部監査の目的
内部監査の主な目的は以下の通りです。
適合性の確認
→ ISO 14001の要求事項や自社のEMSが適切に運用されているかをチェック
法規制の遵守状況の確認
→ 環境関連の法律・規制が守られているかを検証
環境目標の達成状況の確認
→ 設定した環境目標やKPIが達成されているかを評価
継続的改善の推進
→ 不適合や改善点を洗い出し、システムの改善につなげる
2. 内部監査の手順
ISO 14001の内部監査は、以下のような手順で実施されます。
🔹 ① 監査計画の策定
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年間監査スケジュールを作成
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監査対象(部門・プロセス)と監査員を決定
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監査の目的と範囲を明確にする
🔹 ② 監査チェックリストの作成
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ISO 14001の要求事項に基づき、監査項目をリストアップ
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自社の環境方針・目標・手順書に基づくチェックリストを作成
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監査の焦点(法令遵守、環境目標の達成状況など)を明確化
🔹 ③ 監査の実施
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文書レビュー(EMS関連の文書や記録を確認)
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現場監査(設備・作業手順・環境対策の状況をチェック)
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インタビュー(担当者へのヒアリング)
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監査証拠の収集(写真、データ、記録の確認)
🔹 ④ 監査報告書の作成
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監査で確認した事実を記録
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適合事項・軽微な不適合・重大な不適合を整理
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改善の提案事項をまとめる
🔹 ⑤ 是正処置の実施
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監査報告書に基づき、是正処置を実施
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不適合の原因分析(なぜ問題が発生したのか?)
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必要な改善策を実行(手順の見直し、教育訓練の強化など)
🔹 ⑥ フォローアップ監査
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是正処置が適切に実施され、効果があるかを確認
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継続的な改善活動の支援
3. 監査チェックリスト(例)
内部監査では、ISO 14001の要求事項に沿ったチェックリストを使用します。
以下は、代表的な監査項目の例です。
監査項目 | 監査のポイント | 適合 / 不適合 |
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環境方針 | 環境方針は文書化され、従業員に周知されているか? | / |
環境目標 | 目標が設定され、その達成状況が評価されているか? | / |
法規制の遵守 | 適用される環境法規制が特定され、最新情報が管理されているか? | // |
廃棄物管理 | 廃棄物は適切に分類・処理され、記録が保持されているか? | / |
環境教育 | 従業員向けの環境教育が定期的に実施されているか? | / |
緊急時対応 | 環境事故発生時の対応手順が整備され、訓練が行われているか? | / |
→ 「不適合(❌)」の場合は、原因を特定し、是正処置を実施する。
4. 内部監査報告書の構成(例)
監査の結果は「監査報告書」としてまとめ、関係者に共有します。
以下は、典型的な監査報告書の構成例です。
🔹 監査報告書の構成
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監査概要
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監査の目的・範囲・対象部門
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監査日、監査員
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監査結果
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適合事項(良い点)
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軽微な不適合(改善の余地がある点)
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重大な不適合(ISO 14001の要件を満たしていない点)
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不適合事項の詳細
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不適合の内容
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根本原因の分析
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是正処置の提案
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改善提案
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さらなる環境パフォーマンス向上のための提案
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フォローアップ計画
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是正処置の実施期限
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次回フォローアップ監査の予定
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5. 是正処置の流れ
監査で不適合が見つかった場合は、以下のようなプロセスで是正処置を実施します。
🔹 是正処置プロセス
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不適合の特定
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監査で指摘された不適合事項をリストアップ
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根本原因の分析(なぜ問題が発生したのか?)
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「5Why分析(なぜを5回繰り返す)」などの手法で原因を特定
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是正処置の計画策定
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具体的な対応策(手順書の改訂、従業員教育の実施など)を決定
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是正処置の実施
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決定した対策を実行し、記録を残す
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フォローアップ監査
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是正処置が有効かどうかを確認
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6. まとめ
内部監査の目的 → EMSの適切な運用・法令遵守・継続的改善を確実にする
監査の手順 → 計画 → チェックリスト作成 → 監査実施 → 報告 → 是正処置 → フォローアップ
不適合対応 → 根本原因を分析し、適切な是正処置を実施する
ISO 14001の内部監査は、環境パフォーマンスを向上させるための重要な仕組みです。
単なる「チェック」ではなく、組織の環境管理を強化し、改善を促すツールとして活用することが大切です!