ISO 9001の取得に失敗する企業の多くは、経営者の関与不足や誤った認識が原因であることが多いです。以下に、具体的な失敗例と、それに伴う経営者の責任について説明します。
- 経営者の関与不足
失敗例:
ISO 9001は経営層のリーダーシップが求められる規格ですが、取得を担当部署(品質管理部門など)に丸投げする経営者がいます。経営者自身がISO 9001の目的や意義を理解していないと、社員の士気も下がり、形だけの導入になりがちです。
経営者の責任:
- 規格の要求事項を理解し、組織全体で推進する責任がある
- トップマネジメントとしてのリーダーシップを発揮し、方針を明確に示すべき
- コスト削減や形だけの取得を優先
失敗例:
「とりあえず認証を取ればいい」という考えで、最低限の対応しかしない場合、審査で不適合を指摘されやすくなります。また、取得後の運用を軽視すると、品質向上につながらず、単なるコスト負担となってしまいます。
経営者の責任:
- ISO 9001は単なる認証ではなく、企業の品質管理向上のための仕組みであることを理解するべき
- コスト優先ではなく、実際に業務改善につながる運用を推進する責任がある
- 従業員の理解・協力を得られない
失敗例:
ISO 9001の導入にあたり、現場の意見を聞かずにトップダウンでルールを押し付けると、社員の反発を招きます。結果として、マニュアルは作成されたが誰も活用しない、形骸化した制度になってしまうことがあります。
経営者の責任:
- 現場の意見を取り入れ、実際に運用可能な仕組みを作ること
- 社員の理解を促し、ISO 9001が業務改善につながることを示すリーダーシップを発揮すること
- 継続的改善を怠る
失敗例:
ISO 9001は一度取得すれば終わりではなく、継続的に改善していくことが求められます。しかし、取得後に管理体制を放置し、内部監査やマネジメントレビューを適当に済ませてしまうと、次回の更新審査で問題が発生しやすくなります。
経営者の責任:
- ISO 9001の運用状況を定期的に確認し、PDCA(Plan-Do-Check-Act)を回すべき
- 形骸化させず、組織の成長に役立つ仕組みにすること
- 外部コンサルタントへの依存
失敗例:
コンサルタントに任せきりで、自社の実態に即した仕組みを作らないと、取得後に運用できず失敗するケースがあります。審査は通るものの、現場では「実態と合わない」と形骸化し、結果的に取得を維持できなくなることもあります。
経営者の責任:
- コンサルタントを利用する場合でも、自社の実情に合った運用をするよう主導すべき
- ISO 9001の仕組みを自社の経営戦略と結びつけ、経営層自らが理解・管理すること
結論
ISO 9001の取得と運用が失敗するのは、経営者のリーダーシップ不足や誤った考え方が主な原因となることが多いです。単なる認証のためではなく、企業の品質向上や業務改善のために導入するという本質を理解し、適切なリーダーシップを発揮することが求められます。