URP23-02
IAJapan 測定のトレーサビリティに関する方針(第 2 版)
平成 23 年 8 月 1 日
独立行政法人製品評価技術基盤機構
認定センター
IAJapan 測定のトレーサビリティに関する方針
1. 目的
この文書は、独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター(以下「IAJapan」とい
う。)が運営する試験事業者、校正事業者及び標準物質生産者の認定・登録プログラム
において、これらの認定・登録の対象となる事業者が関連する法令、規格、規程等で定め
られた測定のトレーサビリティに関する要求事項等に適合することを確実にするため、
IAJapan が計量計測トレーサビリティ(測定のトレーサビリティ)の確保及びその証明方法
に関する方針を示すことを目的とする。
2. 適用範囲
IAJapan が運営する認定・登録プログラムのうち、次に掲げるものを対象とする。
(1) JCSS(計量法校正事業者登録制度)
(2) JNLA(工業標準化法試験事業者登録制度)
(3) ASNITE(製品評価技術基盤機構認定制度)のうち、試験事業者、校正事業者又は標
準物質生産者を対象とするもの。ただし、「ASNITE 試験事業者(環境等)に係る認定の
区 分 一 覧 ( ENRP32 ) 」 で 定 め る 環 境 分 野 の 認 定 区 分 に 係 る 試 験 事 業 者 及 び
ASNITE/JCLA プログラムに係る試験事業者を除く。
3. 引用法令、規格、規程等
この文書では、次に掲げる法令、規格、規程等を引用する。規格、規程等のうち、発行
年又は版の記載がないものは、その最新版を適用する。また、国際規格については、これ
らの規格のその版を翻訳し、技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した_
日本工業規格に読み替えてもよい。
計量法(平成 4 年法律第 51 号)
計量法施行規則(平成 5 年通商産業省令第 69 号)
工業標準化法(昭和 24 年法律第 185 号)
工業標準化法に基づく登録試験事業者等に関する省令(平成 9 年厚生省・通商産業
省・運輸省令第 4 号)
ISO/IEC 17000 Conformity assessment – Vocabulary and general principles(適合性評
価-用語及び一般原則)
ISO/IEC 17025 General requirements for the competence of testing and calibration
laboratories(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)
ISO Guide 34 General requirements for the competence of reference material
producers(標準物質生産者の能力に関する一般要求事項)
ISO Guide 35 Reference materials – General and statistical principles for certification
(標準物質-認証のための一般的及び統計的な原則)
ISO/IEC Guide 99:2007 (Corrected version 2010) International vocabulary of metrology
– Basic and general concepts and associated terms(国際計量計測用
語-基本及び一般概念並びに関連用語)
ILAC P10: 2002 ILAC Policy on Traceability of Measurement Results(測定結果のトレ
ーサビリティに関する ILAC 方針)
APLAC TC005 (Issue No.4): 28/09/2010 INTERPRETATION AND GUIDANCE ON THE
ESTIMATION OF UNCERTAINTY OF MEASUREMENT IN TESTING
(試験における測定の不確かさの推定に関する解釈及び指針)
計量法に基づく登録事業者の登録等に係る規程(認定-法 B-計量法登録)
JCSS 登録の一般要求事項(認定-部門-JCRP21)
JNLA 登録の一般要求事項(認定-部門-JNRP21)
ASNITE 試験事業者認定の一般要求事項(認定-部門-TERP21)
ASNITE 校正事業者認定の一般要求事項(認定-部門-CARP21)
ASNITE 標準物質生産者認定の一般要求事項(認定-部門-RMRP21)
4. 用語
この文書では、ISO/IEC 17000、ISO/IEC Guide 99:2007(以下「VIM3」という。)、ISO/IEC
17025、計量法関係法令、工業標準化法関係法令及び関連する認定・登録プログラムの
一般要求事項で定義される用語を適用するほか、次の用語を定義し適用する。ただし、標
準物質生産者にあっては、(5)及び(6)の用語は、ISO Guide 35 の定義を適用する。
(1) 内部校正:試験事業者、校正事業者及び標準物質生産者が、参照測定標準や実用測
定標準を使用して、自身が保有する試験・校正のための設備・装置や実用測定標準に
対して行う校正をいう。試験事業者、校正事業者及び標準物質生産者が同一のマネジ
メントシステムのもとに運営される別の関連施設をもち、その関連施設が試験事業者、
校正事業者及び標準物質生産者の保有する試験・校正のための設備・装置や実用測
定標準に対して校正を行う場合も内部校正に含む。
(2) 国家計量標準研究所(NMI:national metrology institute):国家測定標準を開発・維持・
供給する機関。国内の場合、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人情報
通信研究機構、日本電気計器検定所、一般財団法人化学物質評価研究機構及び
JCSS 指定校正機関である一般財団法人日本品質保証機構をさす。
(3) 参照測定標準(reference measurement standard)[VIM3 5.6]:ある組織又はある場所
で、ある種類の量の他の測定標準を校正するために指定される測定標準。
(4) 実用測定標準(working measurement standard)[VIM3 5.7]:測定器又は測定システム
の校正又は検証をするために、日常的に用いる測定標準。「実用標準」、「作業標準」又
は「ワーキングスタンダード」と呼ばれることがある。
(5) 標準物質(RM:reference material)[VIM3 5.13]:指定された性質に関して十分に均質、
かつ、安定であり、測定又は名義的性質の検査において、意図する用途に適しているこ
とが立証されている物質。
(6) 認証標準物質(CRM:certified reference material)[VIM3 5.14]:有効な手順を用いて
一つ以上の指定された特性の値及び付随する不確かさ並びにトレーサビリティを与える、
権威ある機関から発行された文書が添えられた標準物質。
なお、ISO/IEC 17025、VIM3 及び計量法関係法令等に基づく主な用語の相互関係は、
表 1 のとおりである。表中、対応する用語がないものは「N/A」としている。
表 1 ISO/IEC 17025、VIM 3 及び計量法関係法令等用語対比表
ISO/IEC 17025 VIM3 ※ [ ]内は箇条番号 計量法関係法令等
N/A 国家測定標準[5.3] 特定標準器
参照標準 参照測定標準[5.6]
(注記 1)
特定二次標準器、及び、
常用参照標準
実用標準 実用測定標準[5.7] 実用標準
仲介標準 仲介測定装置[5.9]
※VIM3 の注記を参照
N/A
標準物質 標準物質[5.13] 標準物質
認証標準物質 認証標準物質[5.14] N/A
測定のトレーサビリティ 計量計測トレーサビリティ[2.41]
(注記 2)
N/A
注記 1:VIM3 の 5.6 は、その英和対訳版では“reference measurement standard”の訳語とし
て『常用参照測定標準』、“reference standard”の訳語として『常用参照標準』が充て
られている。これらの用語は、測定標準の階層では『実用測定標準』の上位に位置付
けられる(VIM 3 の 5.7 注記 1 及び図 A.12 を参照のこと。)。計量法関係法令等で定
める‘特定二次標準器’及び‘常用参照標準’は、何れも“reference measurement
standard”と位置付けられ、VIM 3 の英和対訳版では『常用参照測定標準』と訳されて
い る 。 こ の よ う な 関 係 を 明 確 に す る た め 、 こ の 文 書 に お い て は 、 “ reference
measurement standard”の訳語として『参照測定標準』を採用している。
注記 2:VIM3 の 2.41 は、英和対訳版では『計量計測トレーサビリティ』、『計量トレーサビリテ
ィ』、『計測トレーサビリティ』の順番で訳語が併記されており、何れの訳語も採用が認
められているが、この文書においては、最初の訳語である『計量計測トレーサビリティ』
を採用している。
5. 計量計測トレーサビリティの概念
5.1 計量計測トレーサビリティの定義
用語「計量計測トレーサビリティ」は、VIM3 で次のように定義されている。
計量計測トレーサビリティ(metrological traceability)[VIM3 2.41]:個々の校正が測定不確か
さに寄与する、文書化された切れ目のない校正の連鎖を通して、測定結果を計量参照に
関連付けることができる測定結果の性質。
5.2 計量計測トレーサビリティを確認するための要素
ILAC P10:2002 では、トレーサビリティは、以下の 6 つの基本要素によって特徴付けられ
る、と述べている。この方針において、用語「計量計測トレーサビリティ」又は「トレーサビリ
ティ」を使用する場合には、これらの要素が考慮されている。
(1) 「切れ目のない校正(比較)の連鎖」:通常は国家標準又は国際標準である、その団体
に容認された標準(計量参照)へさかのぼる。
(2) 「測定の不確かさ」:計量計測トレーサビリティ連鎖の各段階について、測定の不確かさ
は合意された方法に従って計算され、全体の連鎖について総合的な不確かさが計算又
は推定できるように表記されなければならない。
(3) 「文書化」:連鎖の各段階は、文書化され一般的に認知されている手続きに従って実施
され、その結果は記録されなければならない。
(4) 「能力」:連鎖において 1 つ以上の段階を実施する試験所・校正機関又はその他の機関
は、(例えば認定されているという証明によって)その技術能力に関する証拠を提示しな
ければならない。
(5) 「国際単位系(SI)への参照」:校正(比較)の連鎖は、可能であれば SI を実現する一次
標準で終わらなければならない。
(6) 「校正周期」:校正は、適切な間隔で繰り返されなければならない、これらの間隔の長さ
は、多くの要因(例:要求される不確かさ、使用頻度、使用方法、装置の安定性等)に依
存する。
6. 計量計測トレーサビリティに関する基本方針
6.1 試験・校正等に用いる重要設備・装置
IAJapan に認定・登録された試験事業者、校正事業者又は標準物質生産者は、その認
定・登録範囲で使用する設備・装置のうち、試験・校正等の結果の正確さ又は有効性に重
大な影響を与えるもの(以下「重要設備・装置注記 1)
」という。)について、校正プログラムを
確立し、適切な校正を実施することにより国際単位系(SI)への計量計測トレーサビリティ
を確保しなければならない。
そのような SI への計量計測トレーサビリティが技術的に不可能又は妥当でない場合に
は、例えば、認定された(又はその他の手段によって能力があると認められる)標準物質
生産者によって供給される認証標準物質(CRM)、又は全ての利害関係者の間で明確に
文書化され合意された特定の方法や合意標準を用いて、計量計測トレーサビリティを確保
しなければならない。
ここで、「重要設備・装置」とは、次の a)~c)のいずれかに該当するものをいう。
a) 試験・校正等の主要な測定に用いる設備・装置注記 2)
b) 試験・校正結果の補正因子等、試験・校正結果に直接重大な影響を与える要因の測定
に用いる設備・装置注記 3)
c) 上記 a)、b)以外の設備・装置であって、それらの測定不確かさが試験・校正等の合成標
準不確かさに対する影響が大きいもの(附属書参照)
注記 1)認定・登録プログラムにより、「重要校正(試験)用設備」と呼ばれることがある。
注記 2)校正においては、例えば基本量である「長さ」を測定対象量とした光波干渉測定装
置やブロックゲージ、組立量である「熱伝導率」を測定対象量としたディジタルマル
チメータ(電力)・熱電対(温度)・ノギス(長さ)等、測定対象量を測定するための
設備・装置をいう。試験においては、例えば材料の引張試験における引張力を測
定する一軸試験機、断面積を測定するために用いられるノギス等、試験結果を得
るための設備・装置をいう。
注記 3)校正においては、例えば「長さ」の熱膨張率の測定に用いる温度計などが該当す
る。試験においては、例えば試験条件を検証するために高精度な設備・装置が規
格に基づき要求される場合などが該当する。
6.2 内部校正
試験事業者、校正事業者又は標準物質生産者が試験・校正等に使用する重要設備・
装置について内部校正を行う場合、内部校正部署は認定を取得することを要求されない
が、ISO/IEC 17025 の校正事業者に関する要求事項に適合しなければならない。
6.3 計量計測トレーサビリティの証明
6.3.1 国際 MRA 対応認定事業者における証明
IAJapan に認定された試験事業者、校正事業者又は標準物質生産者は、その認定範
囲で使用する重要設備・装置について、計量計測トレーサビリティの客観的な証拠を入手
し、保持しなければならない。可能な場合、次のア)~カ)のいずれか一つ以上の記録によ
って計量計測トレーサビリティを証明しなければならない。
ア)適切な国家計量標準研究所(以下「NMI」という。)が CIPM MRA の範囲で発行する注記
1)校正証明書若しくは標準物質認証書又はこれらと同等の校正証明書若しくは標準物
質認証書注記 2)
イ)JCSS 認定事業者が認定の範囲内で発行する注記 3)校正証明書
ウ)ASNITE で認定を受けた校正事業者又は標準物質生産者が認定の範囲内で発行する
校正証明書又は標準物質認証書
エ)ILAC MRA 署名認定機関の認定を受けた校正事業者が認定の範囲内で発行する校正
証明書又は APLAC MRA 署名認定機関の認定を受けた標準物質生産者が認定の範
囲内で発行する標準物質認証書
オ)その他、関連認定プログラムの技術委員会が承認したエ)以外の認定機関の認定を
受けた校正事業者又は標準物質生産者が認定の範囲内で発行する校正証明書又は
標準物質認証書
カ)内部校正の記録。この場合、校正証明書は必ずしも要求されないが、該当する計量計
測トレーサビリティを証明する上で必要な情報をすべて含んだ記録が要求される。ま
た、実施した内部校正が ISO/IEC 17025 の校正事業者に対する要求事項に適合して
いることを証明する注記 4)
ことが併せて要求される。
注記 1)「適切な NMI が CIPM MRA の範囲で発行する」とは、メートル条約に基づく国際度
量衡委員会(CIPM)の相互承認(CIPM MRA)に署名した NMI 又はこれらによって
指名された計量標準機関が、国際度量衡局(BIPM)によって公表されている
CIPM MRA の Appendix C(基幹比較データベース KCDB に掲載)に CMC(校正及
び測定能力)が登録されている範囲内で校正を実施して校正証明書を発行するこ
とをいう。このような発行には、CIPM MRA に署名した NMI 又はこれらによって指名
された計量標準機関が、NMI のロゴマーク(又はこれと CIPM MRA ロゴマークとの
コンビネーション)を付けて校正証明書を発行することを含む。
注記 2)「これらと同等の校正証明書若しくは標準物質認証書」には、CIPM MRA に署名す
る NMI が特定の目的のために、その MRA の範囲外で発行する校正証明書又は
標準物質認証書が含まれる。この場合も、NMI は当該校正分野において、CIPM、
アジア太平洋計量計画(APMP)等の地域計量機関(RMO)が実施する基幹比較、
補完比較等の国際比較等で良好な成績を残している、認定を取得している、又は
学術論文等で当該校正に関する技術が認知されている、といった信頼性の証明
がなされていることが前提となる。
注記 3)「認定の範囲内で発行する」とは、認定シンボルを付した校正証明書若しくは標準
物質認証書又は報告された測定値とその不確かさに関し認定の資格に言及して
校正証明書若しくは標準物質認証書を発行することをいう。
注記 4)「ISO/IEC 17025 の校正事業者に対する要求事項に適合していることを証明する」
とは、マネジメントシステムの運用と文書化、校正従事者の訓練と資格付与、校正
方法の妥当性確認と不確かさの見積もり、校正用設備・装置の管理と計量計測ト
レーサビリティ等、認定を受ける場合と同等の文書や記録を示すことである。
6.3.2 登録事業者における証明
IAJapan に登録された試験事業者又は校正事業者は、その登録範囲で使用する重要
設備・装置について、計量計測トレーサビリティの客観的な証拠を入手し、保持しなければ
ならない。可能な場合、6.3.1 のア)~カ)のいずれか一つ以上の記録によって計量計測ト
レーサビリティを証明しなければならない。
これらの場合において、6.3.1 イ)の「認定」は「認定・登録」に、同注記 3)の「認定の範囲
内」は「認定・登録の範囲内」に、「認定シンボル」は「認定シンボル(JCSS 登録の場合は
標章)」に、及び「認定の資格」は「認定・登録の資格」に読み替えるものとする。
6.4 参照測定標準、実用測定標準及び標準物質
計量計測トレーサビリティの源となる参照測定標準及び標準物質については、ISO/IEC
17025 の 5.6.3 項(参照標準及び標準物質)の規定に従わなければならない。複数の量の
組立により校正を行う場合、その組立に必要となる測定対象量の参照測定標準を保有し
なければならない(6.1 注記 2 を参照のこと。)。
実用測定標準については、参照測定標準及び/又は標準物質への計量計測トレーサ
ビリティを確保しなければならない。この場合、この方針の 6.2 内部校正の規定に従わなけ
ればならない。実用測定標準の校正周期は、参照測定標準の校正周期を参考に、この方
針の 5.2 項(6)に示すような要因を考慮して設定することが望ましい。
6.5 物理定数、国際勧告値等
計量計測トレーサビリティ確保のために物理定数や国際勧告値等注記)を利用する場合
には、技術的、学術的に信頼性が確認されているものを用いなければならない。該当する
適用指針に物理定数や国際勧告値等の利用について特に規定がある場合には、これに
従うことが望ましく、また、物理定数や国際勧告値を利用して特定の量を実現する技術能
力を有していることを証明しなければならない。例えば、ジョセフソン電圧標準等の固有測
定標準(intrinsic measurement standard)を有する場合には、NMIの有する国家測定標準
と直接的又は間接的な比較等により計量計測トレーサビリティを証明しなければならない。
注記)国際科学会議(ICSU)の科学技術データ委員会(CODATA)は、基礎物理定数や熱
力学の重要値等を公表している。
7. 校正事業者、試験事業者又は標準物質生産者への計量計測トレーサビリ
ティ要求事項の適用方針
6 項の計量計測トレーサビリティに関する基本方針に基づき、IAJapan の認定を受けた
校正事業者、試験事業者又は標準物質生産者に対する計量計測トレーサビリティ要求事
項の適用方針は、それぞれ 7.1 から 7.3 のとおりとする。
なお、登録事業者にあっては、7.1、同注記及び 7.2(①を除く。)の文中「認定」とあるの
は「登録」に読み替えるものとする。
7.1 校正事業者(calibration laboratory)への適用方針(JCSS 及び ASNITE)
校正事業者は、その認定の事業範囲で使用する全ての重要設備・装置、参照測定標
準及び標準物質について、可能な限り、適切な NMI 又は適格性、測定能力及び計量計測
トレーサビリティが実証できる校正事業者(多くの場合は認定校正事業者)から、計量計
測トレーサビリティを得なければならない。
校正事業者は、6.3 項のア)~カ)に示す何れかの記録によって自身の重要設備・装置、
参照測定標準、実用測定標準及び標準物質の国際単位系(SI)への計量計測トレーサビ
リティを証明しなければならない。該当する測定対象量について、技術的要求事項適用指
針に計量計測トレーサビリティに関する指針がある場合には、これに従うことが望ましい。
校正事業者が保有する参照測定標準については、適切な NMI から直接校正を受けるか、
又は上述の計量計測トレーサビリティが実証できる校正事業者により校正を受けなけれ
ばならない。
注記)
NMI は、保有する参照測定標準が国際単位系(SI)を実現する一次標準である場合に
は、該当する標準についてできる限り BIPM や RMO の基幹比較(それが該当しない場合
はその代わりとなる国際比較)に参加し、良好な結果を示す報告書を保持しなければなら
ない。NMI の保有する参照測定標準が、他の NMI の一次標準により校正を受けている場
合には、その校正証明書を入手し、保持しなければならない。この場合において、一次標
準を保有する NMI は、CIPM MRA に署名している機関でなければならない。
注記)JCSS 認定事業者が保有する特定二次標準器等及び常用参照標準については、
計量法施行規則第 93 条に規定された期間内に特定標準器等にトレーサブルな校正
等を受けなければならない(計量法第 143 条第 2 項第一号を参照のこと。)。
7.2 試験事業者(testing laboratory)への適用方針(JNLA 及び ASNITE)
試験事業者は、その認定の事業範囲で使用する全ての重要設備・装置及び標準物質
並びに該当する場合には参照測定標準及び実用測定標準について、該当する試験方法
及び設備・装置の特性を考慮し、必要に応じ外部校正サービスの利用又は内部校正注記)の
実施によって、適切な計量計測トレーサビリティを確保できるよう校正プログラムを設計し、
運用しなければならない。
試験事業者が外部校正サービス(内部校正に使用する参照測定標準の外部校正サービ
スを含む。)を利用する場合、校正事業者の場合と同様、適切な NMI 又は適格性、測定能
力及び計量計測トレーサビリティが実証できる外部校正事業者から、計量計測トレーサビリ
ティを得なければならない。
認定範囲で使用する重要設備・装置及び標準物質のうち、6.3 項のア)~カ)に示す証
明が入手できない場合又は当該設備・装置の特性上校正等が該当しない場合には、これ
らに準ずる計量計測トレーサビリティの証明を保持しなければならない。
6.3 項のア)~カ)に準ずる計量計測トレーサビリティの証明には、次の①及び②に示すも
のがある。いずれの場合も、計量計測トレーサビリティの証明に必要な条件を満たしてい
るかどうかの確認を行い、不足している場合には何らかの手段で要件を満たさなければな
らない。
① 6.3 項のア)~オ)以外の校正証明書であって、ISO/IEC 17025 の 5.10 項で定める要求
事項に適合している、次のいずれかのもの:
・ JCSS 認定・登録事業者が認定・登録の範囲外で発行する校正証明書
・ ASNITE の認定を受けた校正事業者又は標準物質生産者が認定の範囲外で発行す
る校正証明書又は標準物質認証書
・ その他の校正事業者又は標準物質生産者が発行する校正証明書又は標準物質認証

・ 測定装置/試験設備の供給者が発行する校正証明書
これらの場合、校正証明書又は標準物質認証書を発行する事業者は、当該校正等を
実施するのに十分なマネジメントシステム及び技術能力を有する必要がある。校正証明
書を利用する試験事業者は、それらが十分であることを検証し記録しなければならない。
このとき、ISO 9001 の認証を受けている校正事業者、標準物質生産者であることだけを
以て十分な技術能力を有している証明とはならない。
② 検証の記録:
特定の重要設備・装置には、その特性上校正が該当しないものがある。そのような設
備・装置については、試験事業者自身による内部検証や、公設試験・検査機関や設備・
装置の供給者による試験設備・装置の検証を利用し、それらの記録(試験証明書)を保
持しなければならない。
検証では、該当する測定対象量について、上位の測定標準の計量計測トレーサビリテ
ィや測定不確かさが明確にされていない場合が多く、このような検証はそれ自身では明
確な計量計測トレーサビリティの証明とはならない。
したがって、試験事業者は試験に使用する重要設備・装置の計量計測トレーサビリテ
ィの証明についてこのような検証を選択する場合には、可能ならばそれらの検証に使用
された参照測定標準について計量計測トレーサビリティがあること、及び検証方法につい
て妥当性確認が十分になされていることを確認した上で、測定の不確かさ又はそれに代
わる計量計測トレーサビリティを証明するための補足情報を入手することが望ましい。
注記)試験事業者が行う内部校正に対し、どこまで厳密に校正事業者に対する要求事項
を適用するかは、試験結果の不確かさ全体に対する校正の不確かさの寄与の割
合に依存する。
7.3 標準物質生産者(reference material producer)への適用方針(国際 MRA 対応 JCSS
及び ASNITE)
標準物質には、国際単位系(SI)又は国際的に合意された標準物質に計量計測トレー
サビリティを確保できないものが数多く存在する。このような場合には、ISO 規格等、国際
的に認知された測定方法を用いるか、十分な妥当性確認を行った測定法を用いなければ
ならない。妥当性確認の方法は、ISO Guide 34 及び ISO Guide 35 の要求事項に従わなけ
ればならない。
附則
1. この規程は、平成 19 年 4 月 1 日から適用する。
附則
1. この規程は、平成 23 年 8 月 1 日から適用する。
附属書(参考)設備・装置の測定不確かさが最終的な試験・校正等の不確かさに与える
影響を評価する際のガイドライン
試験・校正等に使用する設備・装置のもつ測定不確かさが、試験・校正結果の不確かさ
全体に与える影響が大きいかどうかを評価する際には、試験・校正結果全体の不確かさ
(合成標準不確かさ)に対して設備・装置のもつ測定不確かさが 2 %から 5 %以上の影
響を与えることが一つの指標となる(APLAC TC005 2.3 項参照)。
試験・校正結果の不確かさ全体に対する、ある要因の不確かさが与える影響が 5 %で
あるときには、次式
u
u
u .1 05
3
2
2
? ?
?
?
?
?
?
+
から判るように、その要因の不確かさは、それ以外の要因の合成標準不確かさの 1/3
程度である。同様にその要因の不確かさの与える影響が 2 %の場合は、その要因の不
確かさがそれ以外の要因の合成標準不確かさの 1/5 程度となる。
個々の要因が全体の測定不確かさに与える影響が 5 %から 2 %以下であっても、そ
れらが相当数存在している場合には全体として無視できない大きさになる場合がある。ま
た、他の支配的な不確かさ要因が変動する(小さくなる)ことによって設備・装置のもつ測
定不確かさが全体の不確かさに 5 %以上の影響を与えることもある。このような場合には、
個々の要因に対してより厳密な指標(例えば 1 %以上の影響)を適用して評価することが
推奨される。